規制緩和をきっかけに転換した電力・ガス会社の経営
住宅の電化を提案するコマーシャルが街中に溢れています。電力会社、家電メーカー、住宅メーカー、不動産販売会社などが住宅の電化に積極的に取り組みようになったからです。そして、IHクッキングヒーター、電気ヒートポンプ給湯器「エコキュート」、温水セントラル暖房、電気蓄熱暖房器、電気融雪システムなどの普及が加速しています。06年度には、北海道でも、家庭用のエネルギーを全て電気でまかなうオール電化住宅が新築住宅に占める比率が30%を突破しました。電化が進んでいる中国・四国・北陸などではこの比率が40%前後まで上昇しています。さらに、新築だけでなくリフォームでも電化製品の採用が広がっています。全ての住宅に占めるオール電化住宅の比率は現時点では数%にすぎませんが、早晩10%を突破するのは確実でしょう。
都市ガス大手や大都市を供給エリアとする中堅都市ガス会社の営業スタイルも変化してきました。ガス温水式床暖房、ガラストップコンロ、排熱を利用した高効率給湯器「エコジョーズ」、浴室暖房乾燥機、ミストサウナ、家庭用ガスエンジン・コジェネレーションシステム「エコウィル」などの戦略商品を次々に市場に投入するとともに、ガスファンヒーターの低価格化などにも取り組んで、シェアの維持・拡大を図っています。
電力会社やガス会社は90年代半ばまで需要を開拓するという意識をほとんど持っていませんでした。それまで、電力・ガス会社は、電気やガスの需要は自然に増加していくもので、これを満たしていくのが自分たちの仕事と考えていたように思われます。ところが、95年度に始まった規制・制度改革をきっかけに経営意識が明らかに変化しました。規制・制度改革の目的は、安定供給を確保し環境や安全に配慮しながらエネルギー価格の低廉化を図ることでしたが、料金制度の見直し、参入規制の緩和、部分自由化、託送の制度化などが進められた結果、電力会社やガス会社は、収益を維持・拡大するために、コスト削減・効率化だけでなく、拡販にも積極的に取り組むようになったのです。今や、すべての電力会社や都市ガス大手が、住宅メーカー・ディベロッパー・工務店などへの積極的な営業、家電メーカーとのタイアップ、割引料金メニューの導入などによって、新しい需要の開発、顧客の獲得を図り、積極的に販売量を伸ばそうとしています。
石油業界は電力・ガス業界の変化にどのように対応してきたでしょうか。残念ながら、対応は不十分で、かつ、遅かったと評価せざるを得ません。石油製品は、お客様の選択に大きな影響を与える価格面で、電気、ガスに対して優位性があったにもかかわらず、家庭用エネルギーにおけるシェアを落とし続けています。産業用や業務用では都市ガスへの需要シフトを促す政策が採られていましたので石油のシェアが低下するのは仕方がなかったともいえますが、家庭用では電気やガスへのシフトを促すような政策がとられていたわけではありません。私は、流通サービス業界を含めた石油産業全体の危機意識が乏しかったことがシェアが低下した最大の理由だったと考えています。ちなみに、SSでは、元売・販売事業者間で競争が繰り広げられていましたが、これは同じ器の中でシェアを奪い合っていただけで、他業界と競い合っていたわけではありません。
灯油は依然価格競争力あり
石油製品の価格競争力は原油高によってさらに奪われつつあります。
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電力会社は、原子力、水力、石炭火力など原油価格の上昇がコストに直接影響しない電源を持っている。
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電力・ガス会社の天然ガス調達コストは原油価格ほど上昇していない。長期契約に基づくLNGの購入価格は、原油価格とリンクしているが、その大半は油価が一定水準を超えると上昇が緩やかになる契約になっているため。また、国産天然ガスの価格上昇幅はLNGの上昇幅よりさらに小さくなっている。
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電気料金や都市ガス大手の料金は、燃料価格や為替の変動によるコスト変動分を半年後の料金に反映する仕組みとなっているので、原油価格が上昇しても、電気・ガスの料金にはすぐに反映されない。
などが主な理由です。なお、お客様の多くは電気・ガス料金の燃料費スライドの仕組みをご存知ありません。石油関係者は、原油価格が急騰する局面で、この事実をお客様に説明する必要があると思われます。
石油は、コストの安さ、取り扱いの容易さ、供給安定性の高さなどの強みがあります。家庭用のコストを比較すると、設備や機器などのイニシャルコストが割安なだけでなく、灯油の価格を18リットル当たり1600円としても、単位熱量当たりの単価は、電気の四割程度、北海道の都市ガス価格に比べると半額程度に過ぎません。機器やシステムの改良に取り組んで効率を改善し、使い勝手を改善し、業界をあげて積極的に拡販していけば、家庭用の分野では、電気・ガスに十分に対抗できると思われます。まずは、意識を変えることから取り組んでいただきたいと思います。 |