UBS証券会社 伊藤 敏憲


今、取り組むべきこと、まだ取り組むべきではないこと



 大地震と津波で被災した宮城県の沿岸地域を訪れました。未だガレキの山に埋もれる各地の惨状に強い衝撃を受けましたが、そのような被災地の中で「仮営業」の看板を掲げて給油作業に勤しむSSを見つけ、とても頼もしく思いました。

 被災したエネルギー関連施設の復旧は着実に進んでいます。6月4日にはJXの鹿島製油所が復旧しました。まだ大型バースが使用できずVLCCを接岸することができないため、当面、稼働率は6割程度に制約されるもようですが、精製設備の再稼動時期は当初計画より約一ヶ月早く実現されました。
 
 仙台製油所の復旧作業も来年7月末の計画より早く進展しているとうかがっています。ガスは、LPガス、都市ガスともに復旧がほぼ完了しました。電気の復旧も原子力発電所を除いて順調に進んでいます。

 ただ、一つ順調とはいえない「原子力」の問題が日本経済の復興に大きな影をさしかねない状況になっています。震災で被災した発電所に限らず、定期点検を終了しても、立地地域の自治体の承認が得られないため、再稼動できない原子力発電ユニットが増加し続けているからです。現在運転している原子力ユニットは13ヶ月を超えて連続運転することができませんので、このまま再稼動できない状態が続くと、日本の電力供給の3割近くを占めていた原子力からの電力供給が来春までにすべて失われてしまいかねないからです。


今、取り組むべきこと

 今、最も優先して取り組むべきことは被災されたみなさまの暮らしを立て直し、経済復興への道を切り開いていくことではないでしょうか。速やかに復興計画を策定して実行に移すこと、地震および津波の被災者の皆様への救済策を策定し早期に実施すること、これらのための予算を確保すること、福島原子力事故の収束を図り避難を余儀なくされていらっしゃる皆様の暮らし立て直すことなどです。

 そして、あらゆる経済活動や暮らしに欠くことのできないエネルギーに関わる分野では、需給を、需要、供給の両面での対策によって早期にバランス化することが必要です。その際、もともと経営合理化の一環として省エネに取り組んでいた産業界とりわけ製造業向けのエネルギー供給を削減することは避けるべきでしょう。景気の悪化に直結してしまうからです。産業界にはピークシフトのみを求め、需要の抑制を図る対象は、家庭用、業務用分野に限定すべきと思われます。

 供給面では、原子力の不足を補うため、ガス、石油、石炭など化石燃料の利用を拡大することが必要になりますが、暖房・加熱用需要が増大する冬場に向けて、供給源の確保が国家戦略として重要になると考えられます。


まだ取り組むべきではないこと

 新エネルギーは、導入による弊害を考慮しながら取り込まないと、様々な問題が生じます。コストが割高になるのはもちろんですが、太陽光や風力は出力が不安定で、あらかじめ正確に予測することができないからです。現在の技術でも電圧・周波数調整装置や電池などを用いれば出力を安定化することは可能ですが、コストが肥大化してしまいます。新エネルギーの導入は、短期対策の中で考えるものではなく、中長期戦略の中で議論すべきことと思われます。

 今はまだ長期戦略を議論すべき時期ではないと思われます。例えば、原子力災害が収束しない中で原子力の将来を議論することは妥当ではないでしょう。冷静に議論することができる状態ではないからです。そして、このような時期だからこそ、開かれた場で議論することが必要なのではないでしょうか。どなたが提案し、どのように議論され、結論が導き出されたかがわかるようにすべきではないでしょうか。

 

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