UBS証券会社 伊藤 敏憲
 

 

   

   需要減少局面で石油業界がとるべき道は

 

減少に転じた石油製品の内需

06年度の石油製品の国内販売量は、ガソリンが前年比1・3%減、ナフサが1・4%増、ジェット燃料油が6・2%増、灯油が13・7%減、軽油が1・4%減、A重油が13・8%減、C重油が15・9%減、燃料油合計で5・2%減となり、4年連続で前年実績を割り込みました。減少率が5%を上回ったのは第二次オイルショック時の82年度以来のことでした。
 

記録的な暖冬の影響で、昨冬は暖房需要が実勢以上に大きく落ち込んでいましたので、07年度は国内販売量が増加に転じる可能性もありますが、よほどの猛暑厳寒にでもならない限り、今後、燃料油の内需が90年代の水準まで回復することはないでしょう。エネルギー産業では、規制・制度改革をきっかけに、産業間・企業間での競争が拡大し、シェアが短期間で大きく変動するようになりましたが、石油は他エネルギーと競合するほぼすべての分野で都市ガスあるいは電気にシェアを奪われており、
その理由が一過性のものとは思えないからです。
 

産業用・業務用の分野では都市ガスのシェアが上昇しています。@機器やシステムの性能・機能の向上を背景にしたガスコジェネレーションシステムの普及、Aパイプラインネットワークの拡大、Bユーザーの環境意識の高まり、C手厚い導入支援政策、D原油高による天然ガスの価格競争力アップなどによって、石油からの燃料転換や、電力需要の取り込みに成功しているからです。
 

一方、家庭用では電気のシェアが高まっています。@電気製品の性能・機能の向上、A住宅の機密性・断熱性の向上、B電気料金の引き下げ、原油高を背景にした石油製品やガスの価格上昇などによる電気の価格競争力アップなどがその要因です。
 

家庭の暖房分野では、かつて灯油がコスト競争力で他を圧倒していましたが、電気のランニングコストの方が割安なケースが出てきました。ヒートポンプの性能が向上したことによって普及型のエアコンでも投入エネルギーの4〜5倍の熱を発生させることができるようになったこと、割安な深夜電力を利用した蓄熱式暖房機器の性能が向上したこと、加えて、原油高を反映して
灯油の価格が急騰したからです。
 

問題なのは、石油よりコストが割高なガスへのシフトが家庭でも進んでいることです。給油の手間が要らないことがその主な理由としてあげられていますが、石油業界に、この問題に対処する意識があれば、ガスへのシフトを抑制することができたと思われます。残念ながら、家電大手が昨シーズン、石油暖房機器の製造・販売事業から全面的に撤退してしまいましたので、今後、家庭の暖房分野で灯油のシェアが低下するのは避けられないでしょう。精製・元売関係者の中には「需要が増加している石油化学製品の原料やジェット燃料油にシフトできるので、灯油の需要減少によるダメージは小さい」と説明される方がいらっしゃいますが、販売業界の立場からするとまったく意味のない解釈です。石油暖房機器の専業メーカーとタイアップして、失地を最小限にとどめるべく努力すべきでしょう。
 

石油は、寒冷地以外では、給湯需要をほとんど取り込めていません。昨シーズン、排熱を有効に利用して熱効率を95%まで高めた石油給湯機「エコフィール」が発売されました。エコフィールは家計にも環境にもやさしい素晴らしい給湯器ですが、ガス業界では、同様の性能を持ったガス給湯機「エコジョーズ」を数年前に導入済みです。また、電気ヒートポンプを利用し、かつ、割安な深夜電力で湯を沸かす「エコキュート」に比べるとエコフィールやエコジョーズのランニングコストは割高です。エコフィールが、エコジョーズやエコキュートより早く、あるいは、せめて同時期に発売されていたなら、給湯市場における石油の位置づけは大きく異なっていたと思われます。
 

暖房、給湯分野に限らず、石油系の機器・システムの開発は、電気だけでなく、シェアが低い都市ガスに比べても劣っています。石油産業は、消費者のニーズを反映すべく、もっと積極的に機器・システムの開発に参画していく必要があるのではないでしょうか。
 

 

極めて危険な需要減少局面での「安売り」志向

需要減少局面でもっとも避けなくてはいけない行為は安売りによって販売数量を伸ばそうとすることでしょう。エネルギー需要は価格変動の影響をほとんど受けません。安売りをしても業界全体の需要を増加させることはできず、安売りをすればするほど、業界全体の利益は減少することになるからです。
 

安売りによって収益性が低下すれば、事業者の再編や淘汰を促すことができ、集約が進めば収益環境は改善すると指摘されることがあります。これも需要減少局面では危険な考え方です。需要増加局面では、集約化後の拡販効果によって安売りで失った損失を取り返すことができることがありますが、需要減少局面では、集約化後の拡販効果が限られますので、損失を取り返すことができない可能性が高いからです。
 

また、そもそも事業者の数と収益性との間にはほとんど関係がありません。これは、95年度以降にSSの数が減少し続けているにもかかわらず、収益環境は悪くなったり良くなったりを繰り返していることからも容易に想像がつくと思います。「SSの数がどこまで減少すれば販売競争はなくなるか?」これはSS業界の皆様からよく頂戴する質問ですが、その答えは「どれだけ減少しても販売競争はなくならない」です。
 

ただし、需要が減少するといっても、燃料油の平年ベースでの減少率はせいぜい2〜3%程度、ガソリンに限れば、向こう数年間の減少ペースは年率1〜2%程度にとどまる見込みです。そして、自動車の登録台数は当面増加し続け、カーケア事業の規模も市場全体では拡大し続けると予想されます。

 

SS業界は、まだ背伸びをせず、地に足をつけた状態で工夫と努力を重ねていけば、収益を維持・拡大することができる環境にあると私は考えています。来月はSS事業における収益改善策について提言させていただきたいと思います。


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