元売がバイオガソリンの試験販売を開始
首都圏の50SSで4月27日からバイオETBEを配合したバイオガソリンの試験販売が開始されました。バイオETBEは、植物を原料にしたバイオエタノールと石油系のイソブテンを合成してつくられた化合物で、現時点では国内に量産設備がありませんので、今回発売されたバイオガソリンには石油元売各社がフランスから共同輸入したETBEが用いられています。バイオETBE配合ガソリンの規格はレギュラーガソリンと完全に合致していますので、従来のレギュラーガソリンと同様に取り扱うことができ、品質にも差はありません。
石油元売は、バイオETBE配合ガソリンの取扱SSを、2008年度に100ヶ所、2009年度には1,000ヶ所程度まで拡大して実証試験を行い、2010年度には、バイオETBEを国産化するとともに、取扱店を全国に展開してバイオETBEの使用量を84万キロリットル(バイオエタノール換算約36万キロリットル=原油換算約21万キロリットル)まで拡大する計画です。
バイオガソリンには、バイオエタノールをETBEに加工せず、そのままガソリンに配合するものもあります。石油元売はETBE配合タイプでの導入を主張していますが、環境省、農林水産省などは、バイオエタノール直接配合タイプでバイオガソリンの導入拡大を図ろうとしています。ちなみに、沖縄県の宮古島では、りゅうせき鰍ェ環境省からの委託を受けて、同島産のさとうきびから生産したバイオエタノールを配合したバイオガソリンの実証試験を行っています。
アメリカ、カナダ、ブラジル、コロンビア、EU諸国、インド、中国、タイ、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドといった、先進諸国、新興国、農業国などでは日本以上にバイオ燃料導入の議論が活発に行われています。すでに、複数の国・地域でバイオ燃料の導入目標が設定されたり、導入が義務付けられたりしています。これらの国で販売されているバイオガソリンの大半はバイオエタノール直接配合タイプです。
一方、今回のコラムでは言及しませんが、バイオ起源の油脂や廃油を加工して製造した軽油代替のバイオ燃料の導入も国内外で進められています。
バイオ燃料導入の背景
ところで、なぜ、バイオ燃料の導入が世界的に進められるようになったのでしょうか。理由の一つは温暖化防止など地球環境問題への関心の高まりからきています。
植物は生育する過程で光合成によって二酸化炭素を吸収します。よって、さとうきび、とうもろこし、麦、米、芋、大豆、キャッサバ、テンサイ、草木、乳製品などから生産されるバイオエタノールを燃料に利用すると二酸化炭素の排出量を抑制できることになり、地球温暖化防止に有効とされているのです。
1997年に締結された地球温暖化防止のための国際条約「京都議定書」が発効し、2008年から評価が始まりますが、この京都議定書においてバイオエタノールは温室効果ガスの排出源としてカウントされません。
日本は京都議定書において、2008〜2012年に人口一人当たりの温室効果ガス排出量を1990年の実績に比べて6%削減することを公約しています。ところが、わが国の2005年度の温室効果ガス排出量は1990年度に比べて全体で8.1%、運輸部門は18.1%増加しています。中でも自家用乗用車からの排出量は48.0%も増加しています。このため、日本政府は、2010年に原油換算で50万キロリットルのバイオ燃料を運輸用途に導入する目標を設定し、石油業界はこのうち21万キロリットル相当分の分担を求められているのです。石油元売がバイオETBE配合ガソリンの販売を開始したのはその対策のためなのです。
もう一つの理由はバイオ燃料が大きなビジネスになるからです。アメリカやブラジルが、何故、バイオ燃料の導入に積極的なのか、日本でバイオエタノールの導入を進めようとしている方々がどのような立場にいらっしゃるのかを考えていただければお分かりいただけると思います。
バイオエタノールの2005年の国別生産シェアは、アメリカとブラジルがそれぞれ35%、中国8%、インド4%、フランス2%の順で、日本ではごくわずかしか生産されていません。アメリカ、中国、インドなどは内需をまかなうのが精一杯で、十分な輸出余力があるのはブラジルだけです。すでにバイオエタノールは需給が逼迫して価格が急騰し始めていますが、バイオエタノールだけでなく、その原料になるサトウキビや穀物などの農産物、それらの農産物を増産するための弊害で耕作面積が縮小したオレンジなど他の農産物の価格にも影響を及ぼしています。すでに多大な利益を生み出しているのです。
多くの問題を抱えて議論も尽くされていないバイオ燃料
私は、日本ではバイオETBE配合、バイオエタノール直接配合のいずれのタイプも認められるようになると予想していますが、SSで複数のバイオガソリンを販売するのは効率的ではありません。また、バイオガソリンには複数の問題点が指摘されています。
例えば、エタノールは水と混ざりますが、水が存在すると金属は腐食しやすくなります。すなわち、バイオエタノール直接配合タイプだとガソリンに水を引き込みやすくなりますので、タンク、配管などを腐食にくい材質のものに交換したり、腐食を防止する性質がある樹脂をライニングしたりしなくてはならなくなる可能性があるのです。そのための費用が業界全体で3,000億円前後に達するとの試算もあります。また、バイオエタノールを現在販売されているガソリンにそのまま混合すると、蒸気圧やオクタン価などが規格に合わなくなってしまうおそれもあります。
一方、ETBEに加工して配合する場合は、物流設備を改造する必要はないとされていますが、現時点では日本国内にETBEを量産する設備がありませんので、そのための投資が必要になります。またETBEに関しては人体に悪影響を及ぼす可能性も一部で指摘されています。
また、バイオ燃料を導入する際の費用は政策の変更に伴って発生するものなので、その費用を石油業界だけで負担するのは公平とは思えません。私は、石油業界は、バイオエタノール直接混合タイプが認められることも念頭において、十分な助成を獲得するべく、速やかに業界をあげた対策を講じる必要があると考えています。何のメリットもなく、多額の設備改造費用の負担を強いられる可能性がある販売事業者は、石油商業組合などの活動を通じて、もっと積極的に対応する必要があるのではないでしょうか。
バイオ燃料の導入に関わる問題は他にもあります。今後、世界各国でバイオ燃料の増産が進められる過程で、バイオエタノールの奪い合いが起きて、量的な確保が難しくなる可能性があるのです。人口の増加や耕地面積の縮小によって食物の不足が指摘される中で、農産物から生産したエタノールを燃料にすることに異議を唱える声も高まっています。
京都議定書では温室効果ガスの排出源にカウントされませんが、バイオ燃料が環境に負荷を与えないわけではありません。バイオエタノールなどを生産する過程でエネルギーが消費されて温室効果ガスが発生するからです。原料や製造方法によっては、原油から生産したガソリンや軽油より温室効果ガスの総排出量が多くなるケースもあるのです。本来は原料の生産から加工・輸送・消費の各段階で発生する温室効果ガスを通算して地球環境全体への負荷を評価する必要があると思われますが、この観点での検討は十分になされていません。
このような多くの問題を抱え、かつ、それらの問題を十分に議論することもなく導入が図られつつあるバイオ燃料、今後、紆余曲折する可能性もあると思われます。
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