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09年前半の原油市況は下値を模索する展開に
原油価格は、09年半ばごろまで、下値を模索する展開が続くと予想されます。需要の減少と供給能力の増加によって需給が崩れてしまっているからです。原油価格のトレンドは需給を反映する傾向が強いので、需給が引締るようになるまで大きく反発するとは思えません。
原油価格の下値の目処は、限界的な供給コストから導き出すことができます。原油開発コストは、鋼材などの資材や機材の価格の高騰と調達難、エンジニアリングコストの上昇、開発要員の逼迫、開発条件の悪化などによって、04年から08年にかけて急激に上昇しました。03年ごろには1バレル30ドル(WTI原油ベース)でも割高といわれていた新規開発プロジェクトの損益分岐点が、08年前半には50ドル台でも当たり前になり、条件が厳しいプロジェクトでは70ドル台に及んでいました。秋口から、資機材価格の下落やエンジニアリング需給の緩和により損益分岐点は低下に転じましたが、依然、50ドルを超えるプロジェクトは少なくないもようです。したがって、現在の原油価格の下値の目途は50ドル前後と推察されます。ただし、原油価格は先物市場によって形成されるようになっていますので短期間ならこの水準を大きく下回ってもおかしくありません。09年前半は厳しい経済情勢が続くと予想されますので、WTIおよびブレント原油の価格が40ドルを割り込んでも不思議ではないでしょう。
ただし、原油価格が50ドルを下回る水準で推移し続けると、探鉱・開発計画の延期や中止が広がる可能性があります。実際、原油価格が60ドルを割り込んだ08年10月ごろから、金融情勢の悪化による資金調達難も影響して、石油開発会社の投資計画の下方修正が相次ぐようになり、開発計画の延期や中止だけでなく、生産設備の維持・更新投資が削減されるケースも出てきました。よって、原油の供給能力は、09年前半までは進行中のプロジェクトが立ち上がってくることによって増加し続ける見通しですが、09年後半には減少に転じる可能性がでてきたと考えられます。
一方、原油の世界需要は、米国発の金融不況の影響が世界各国の経済に波及し始めてから1年が経過する09年半ばまでは、省エネルギー、他エネルギーへのシフト、景気悪化によるエネルギー需要の減退などによって、前年比でマイナス成長が続く見通しです。
09年後半も先進国の需要は減少し続ける可能性が高いでしょう。世界各国で金融システムが麻痺に近い状態に陥りつつあるだけに、経営体質が脆弱化し資金繰りが悪化している巨大企業が次々に経営破たんに追いやられるようだと、減少幅が拡大する可能性もあると思われます。しかし、中国やインドなどの新興国や発展途上国では、人口の増加、モータリゼーションに代表される生活水準の向上などによって需要が底上げされる可能性が高いので、09年後半から10年にかけての時期に、世界需要は前年比でプラスに転じると予想されます。
上述したシナリオは、需要が回復に転じると、原油の需給が短期間で逼迫し、市況が一気に押し上げられる可能性があることを示唆しています。ひとたび上昇に転じると、昨年までの高騰局面で需要に大きな影響を与えなかった100ドル近辺まで急反発する可能性があると考えられます。
石油・石化製品の国際市況は値崩れが広がる可能性が高い
08年は海外で石油・石化製品の値崩れが広がると予想されます。
景気の悪化を背景に需要が伸び悩むと予想される一方で、アジア・中東地域を中心に世界各地で進められていた新増設設備が08年後半から09年前半にかけて相次いで竣工する見通しですので、需給が緩和すると予想されるからです。
石油精製各社の対応は国や地域を問わずほぼ同じです。現在、世界各地で建設が進められている新鋭製油所は、いずれも、原油の重軽価格差の拡大を前提に、需要が拡大していて採算も良いサルファフリー軽油やジェット燃料油、08年前半まで需要が急拡大していたベンゼン、パラキシレンなど芳香族製品の増産を目指した装置構成になっています。
この結果、08年は好市況が維持された軽油、ジェット燃料油、ヒーティングオイルなどでも09年は利ざやが縮小に向かう可能性があります。
また、オフガスを原燃料にした石油化学プラントが中東産油国で次々に立ち上がる予定ですので、その主要製品であるエチレンやオレフィン類については、原油やナフサを原料にする国内のプラントではコスト的に対抗しきれない低市況が形成されるようになる可能性があるでしょう。
元売の再編・集約再始動をきっかけに石油精製・販売業界の収益環境が改善に向かう可能性高まる
石油製品の国内需要は、よほど天候に恵まれない限り、09年も縮小し続けるでしょう。特に年前半までは、07年から08年にかけて急速に進んだ節約や石油機器離れが定着した影響によって、年率5%前後の減少ペースが続くと予想されます。原油価格が急反発しない限り、年後半には減少ペースが鈍化すると予想されますが、仮に原油価格が50ドル以下の水準で推移し続けたとしても、石油製品の国内需要が増加に転じるとは思えません。ユーザーの環境意識の高揚、都市ガス供給エリアの拡大、原油高による価格競争力アップなどによって産業用・業務用ではガスの優位性が高まっており、家庭用では、機器・システムの機能および性能の向上、安全性・清潔性の高さなどによって省エネ住宅とのマッチングも良い電気製品が、暖房、厨房、給湯などの用途でシェアを拡大しているからです。石油業界の需要の維持・拡大に向けての取り組みが十分ではないことが、この動きに拍車をかける格好になっています。
内需の減少に対応するため、精製・元売各社は、石油製品輸出の拡大と石油化学製品へのシフトを進めようとしています。特に石油製品の輸出能力は3年前に比べて2〜3倍に拡大されましたので、09年も輸出量は増加し続ける見通しです。これは妥当な戦略と思われます。石油製品の国内需要の減少が続くと予想される一方で、海外では中国やインドなどの新興国や発展途上国を中心に人口の増加、経済成長、生活水準の高度化などによって石油製品や石油化学製品の需要が拡大傾向で推移すると予想されるからです。実際、08年には輸出の拡大によって内需の減少が一部カバーされ、国内市況の悪化をある程度防ぐことができていたと評価できます。
09年には、先ごろ経営統合計画を発表した新日本石油と新日鉱ホールディングスが石油精製設備の集約を開始する予定です。両社は、09年10月に共同持ち株会社を設立した後、10年4月に新日本石油と新日鉱ホールディングス傘下のジャパンエナジーを統合する予定ですが、事業会社設立後2年以内に精製能力を日量40万バレル以上削減する計画を明らかにしています。この一環として、09年春には日本海石油の富山製油所の原油処理が停止され、また、新日本石油精製の大阪製油所が中国CNPCグループとの合弁化されて、生産量相当分をCNPCが引き取ることになりますので、国内供給能力は減少する見通しです。
この結果、内需の減少は石油製品輸出の拡大と設備集約によってカバーされて、需給が引き締まり、09年春以降に国内の石油精製・販売事業の収益環境は改善に向かうと予想されます。
新日本石油、ジャパンエナジーの英断に他グループが追随して、精製設備の集約が進むようになると、収益環境がさらに改善するでしょう。
新仕切価格体系導入によってガソリン市況は原油価格の動きをより強く反映するようになる
新日本石油、出光興産、ジャパンエナジーの3社が、08年10月から11月にかけて、東京工業品取引所の先物価格やスポット卸売市況(業転市況)に連動した週決めの新しい仕切り価格体系を導入しました。
石油先物市場の価格やスポット卸売市況は原油のスポット価格と連動して動く傾向が見られます。これらの元売の従来の仕切価格は、原油や石油製品が日本に到着した段階での輸入コストを決定要素の一つとしていましたので、従来に比べて、原油価格の動きをより早く、かつ、より鋭敏に反映するようになったと考えられます。
そして、これが、08年10月から12月にかけて原油価格が急落した局面で、ガソリンなどの市況を押し下げる効果を及ぼしました。ただし、原油価格が上昇する局面では逆に市況を押し上げる効果がもたらされるものと予想されます。
いずれにしても、仕切価格がより短期間で大きく変化するようになっていますので、小売段階では、今までより以上に価格設定に注意を払う必要が生じるようになったと考えるべきでしょう。
厳しい経営環境下でも好機は必ず到来する
SSでは、近年、ガソリンや燃料油の販売数量や損益分岐点コスト、油外収益並びに油外収益による人件費カバー率といった経営指数が良好でも、資金不足に陥ってしまうケースが増えています。安売量販志向の強いSSほどこの傾向が強くみられます。ガソリン・燃料油のマージンが縮小してきたこと、業界全体のガソリン・燃料油の販売数量が減少してきたこと、元売の直販志向の高まりや大手事業者の拡販によって一般特約店・販売店のシェアが低下してきたこと、取引先の経営悪化などから資金回収が滞るケースが増えてきたこと、これまで低下傾向にあった人件費や諸経費が上昇してきたことなどが、その主な理由と考えられます。09年もこの傾向がさらに強くなっていくと予想されます。
なお、石油販売事業者の多くは、資金不足に陥ると元売や金融機関に協力を求めています。これまでの関係からすると当然かもしれませんが、ほとんどの元売は、系列販売業者やSSの数が多すぎるので、再編・集約・選別の必要があると考えていますし、金融機関も石油販売業界の先行きを厳しく評価していますので、元売や金融機関を過度に信頼して安易に支援を求めることはお勧めできません。石油販売事業者は資金管理においても自立意識をより強く持っていただく必要があると思われます。
石油販売業界全体の収益は、石油製品の販売数量の減少、マージンの低迷、油外収益の減少によって、収益は厳しい状況にありますが、08年にオイルやタイヤなどの販売収益を拡大することに成功したSSがありました。私の知りうるかぎり、このような素晴らしい経営を実践しているSSのすべてが向上心の高い経営者やマネージャーによって運営されています。
SSを、さまざまなサービスを提供して、その対価を頂戴する店と考えると、ほとんどのSSに収支を改善できる余地があると思われます。成功を収めている他の流通サービス業の店舗に比べて、規制緩和が始まって以降にSSでみられた変化は大きくありません。サービス内容が向上したSSも多いとはいえません。より大きい収益を獲得するためには、顧客ニーズの変化に対応して、可能性のあるビジネスを取り込んだり、サービスの質を向上したりして、より多くのお客様に支持されるようにしていかなくてはいけません。
私は、石油販売業の経営者に求められている資質は、判断力、決断力、実行力、迅速性、柔軟性などにあると考えています。経営者の多くは、より良くするためには変えていかなくてはいけないことをすでに理解されていらっしゃるように思います。あとは、どのように取り組み、何を変えればよいのか。過去にとらわれずに柔軟に判断していただきたい。そして、判断されたら、できるだけ速やかに経営改善に取り組んでいただきたいと思います。
なお、サービスの質は、ほんの一瞬でも気を緩めたり、向上心が途切れたりすると、著しく低下してしまいます。そして、それはお客様の満足度にすぐに大きな影響を及ぼします。SS業界においても、何年もかけて築き上げてきた素晴らしいサービスがあっという間に崩れてしまった例が見られるようになっています。販売数量を拡大しようとして安売りに走ってしまったケース、省サービス型のセルフサービスSSに転換してしまったケース、何らかの理由で経営者やマネージャーの意欲が低下してしまったケースなどです。
石油製品の販売量は減少していますが、石油は依然、日本のエネルギーの太宗を占めており、その重要性が低下しているわけではありません。向上心を持ち続けて、経営の変革に取り組み続ければ、必ず好機は到来するとお考えください。
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