原油価格は1年間で約2倍に
原油価格は、昨年1月に底入れした後、ほぼ一貫して上昇を続け、WTI原油先物期近価格は1月に1バレル100ドルを突破、1年前の約2倍、5年前の03年の平均と比べると3・3倍になった。中国、インドなど発展途上国の需要増を背景にした需給の引締り、地政学的リスクの高まり、ドル安、石油精製能力の不足、在庫の減少、石油先物取引市場へのファンド資金の流入などが高騰の主な原因と考えられる。
原油価格の高騰を反映して石油製品の価格も大幅に上昇している。今年2月の北海道の民生用灯油価格(消費税込み配達価格)は1リットル約100円で1年前の33%高、5年前の2・1倍、産業用A重油の価格も1年前の28%高、5年前の2・4倍になっており、電気やガスなどに対する価格優位性は大きく低下してしまった。
原油価格は今年半ば以降に下落に転じる可能性がある
08年の前半は、上述した需給など諸情勢に大きな変化が生じない見通しなので、原油価格は高値圏で推移すると予想される。ただし、年後半には、後述する理由により、異常気象や想定外の供給障害が生じない限り、需給が緩和される可能性が高く、原油価格は下落トレンドに転じる見通しだ。私は60ドル前後まで値下がりする可能性があると予想している。
先進国の08年の原油需要は、「京都議定書」の第1約束期間(08年度〜12年度)入りや原油高を背景にした省エネ・石油代替の進展、景気減速の産業用及び輸送用需要への波及、バイオ燃料の導入拡大などでマイナス成長に陥り、発展途上国でも原油高と先進国の景気減速の影響で伸びが鈍化する見込みだ。一方、原油供給能力は、開発投資の積極化により増加ペースが加速し、石油精製能力もアジア・中東を中心に年後半以降に急拡大する見通しだ。原油生産能力、ならびに、石油精製能力は、それぞれ今年1年間で日量2百万バレル前後拡大される見込みなので、原油及び石油製品の需給は年半ばごろから緩和に向かうと予想される
。
なお、投機マネーの影響で原油価格が嵩上げされていると指摘されることがあるが、投機マネーは、価格を嵩上げしているのではなく、価格変動幅を拡大していると考えるべきだ。先物取引では買いから入ったら売って、売りから入ったら買って決済しなければならないからだ。原油も株式や他の国際商品と同様に投機マネーによって急騰だけでなく急落も誘引される可能性があるのだ。ちなみに、100ドルを超えても原油需要は増加し続けている。これは先物市場で形成された価格が実質価値と大きく乖離しているわけではないことを示している。
電気・都市ガスは燃料高を数ヶ月後に料金に完全転嫁できる
ところで、電気、都市ガスの料金には、100ドル原油のコストがまだ反映されていないことをご存知だろうか。
電気及び都市ガス大手の料金は、原油、LNG、LPG、石炭などの輸入価格の変動分をほぼそのまま料金に転嫁できる仕組み「燃料費調整制度」(都市ガスのケースは「原料費調整制度」)を採用しているからだ。四半期毎に平均燃料単価を計算し、基準価格との差を半年後の料金に転嫁できる仕組みである。
原油のスポット価格の動きは1ヶ月余り後に輸入CIF価格に反映される。LNGの価格は前四半期の原油価格を基に決定されるケースが多い。また、電力会社は石炭の大半を年に1回価格を改定する(一般に4月現地出荷分、5〜6月日本到着分から)長期契約に基づいて調達している。ということは、原油スポット価格の変動がLNGの輸入価格に反映されるのは4〜5ヵ月後で、それが電気及びガス料金に反映されるのはさらに6ヵ月後。石炭の08年度の長期契約価格は前年の2倍前後に急騰する見通しだが、これが料金に完全に反映されるのは来年1月以降。すなわち、100ドル原油の価格が完全に反映されるのは来年1月以降になるのだ。
もちろん、原油価格が下落に転じれば、状況は反転するが、少なくとも1年余りにわたって原油価格が上昇トレンドで推移している局面では、石油製品の価格が電気やガスの料金に比べて大きく値上がりしているように見えることになる。この仕組みは、電力会社や都市ガス会社の料金表やインターネットのホームページなどで解説されているが、消費者の多くが正確に理解しているわけではない。石油業界は、石油からの燃料転換を検討している可能性があるお客様に、この事実を説明する必要があるのではないだろうか。
|